人気ブログランキング | 話題のタグを見る

神戸学院大学人文学部人間文化学科2005年特別講義I編


by shohyo

超ひも理論とはなにか

超ひも理論とはなにか_d0068008_14265921.jpg「超ひも理論とは、この世界を10次元空間と考えると、宇宙を説明するすべての物質的問題が10の-35乗メートルのひもの運動で解明できることなる。このひもがすべての物質の究極の姿、すなわち、この我々が存在するこの世界も、このひも一本で説明することができる」というのである。この理論が証明されれば、かの有名なノーベル賞を取ったアインシュタインが提唱した「相対性理論」や量子力学までをも統合することのできてしまう究極の理論である。
このように、論理的な思考ができるのも、著者の物理学者としての当然の考え方の現れであるが、この著者のもうひとつの顔である、ミステリー作家、湯川薫という肩書きにも物理学者としての論理的な考え方が遺憾なく現れている。一見両立できない二足の草鞋をうまくこなしているのも、著者しかできないものである。
この超ひも理論に登場してくる、主人公「ひも」このひもの大きさはなんと、水素原子にも、水素原子の真ん中にいる陽子にも、さらには陽子の外にいる電子よりもずっと小さいもの。これが、我々のすべてのものの中に存在する。
しかし、著者はこのように冒頭で述べているが、これが、我々の「眼」で「見る」事はできないといっている。なぜなら、このひもが存在しているのは、先に述べたように、「10次元」の世界に存在するからである。ここで考えてみよう。我々が今見たり、感じたりしている空間は「3次元」の世界なのである。我々は、自らが存在する次元より低次元のほう、つまり、2次元、1次元、0次元の世界は図に書いたりすることで、認識することが出来る。つまり、理論上は10次元と言われても、実際に我々の「眼」で「見る」ことができなければ、机上の空論に成りかねない。客観的に我々がその「ひも」の存在を見たり、触ったり、感じ取ったり出来てこそ、人間は存在を感じ取れるのではないかと考える。この点については、少し差別的な言い方になるが、数学や物理などが得意な所謂、「理系」の方々の、答えは一つという結果論的な考え方になってしまっていると、文系の方々の答えはいくらでもあるという、曖昧さとはかけ離れてくる。
しかし、巷のビジュアル的なエフェクトを推して繰り広げているSF作品を遥かに超えるものが、この超ひも理論の歌い文句である、『すべての物質はこの10次元の単なるひもですべて説明できる』といわれれば、数学や物理が高校のときは苦手だった人も、ふと本屋に入ったときにこんなキャッチコピーが目に入ったら思わず手に取ってしまうところは、著者の文才のあられれである言えよう。

文:(株)片翼のジレンマニクル 
by shohyo | 2005-06-23 14:27