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神戸学院大学人文学部人間文化学科2005年特別講義I編


by shohyo

地球の水が危ない

地球の水が危ない_d0068008_1416182.jpgいま、世界は深刻な水危機に直面している。
 第二次世界大戦以後・20世紀後半からの世界を挙げての開発ラッシュにより、日本を筆頭に各国の生活水準は飛躍的に上昇した。同時に都市化・工業化とともに世界的に蔓延した河川や湖沼の水質悪化、人口急増に間に合わない水の供給が各地に深刻な水不足を発生させた。
 「水」という必要不可欠なものを題材にしているため、内容に共感しやすく、また身近な問題としてとらえることができる。
 水不足の解決=ダムという単純な公式はもはや通用しなくなっている。広大な土地が水没することだけでなく、河口付近の海岸侵食と漁業への打撃・風土病の蔓延・下流への流出土砂の減少による地味の劣化・河床低下など、環境への影響が大きすぎるのだ。現在ダムに代わる有力な水資源は開発されていないため、状況は悪化の一歩を辿っている。先進国にはダム建設地点は残されていないが、人口増加著しい途上国ではこれからもダムの増加が予想される。
 また、地球の全陸地の45%は国際河川流域である。複数の国で水を分け合っている地域では当然自分勝手にダムを作るわけにもいかず、上下流の利害も絡んで、しばしば紛争の火種になることさえある。実際、アラブとイスラエルの長年にわたる対立の底を流れる要因には常に水問題があった。
 では国際河川を有さない日本はというと。使用される水はすべて日本列島に降り注ぐ雨雪によってもたらされるし、水資源計画や治水計画も自国だけでたてることができる。だが低い食糧自給率が水の大量輸入を余儀なくさせている。河川の流れのように目に触れることはないが、輸入食糧の農産物や畜産物、木材のための樹木育成にも莫大な水が使われている。
 つまり、輸入先の国で深刻な水不足が発生すれば、当然日本も重大な影響を受けることとなる。国際河川を有していないからといって他国の水問題を軽視してはならない。水の国際化は急速に進行しつつあり、間接的な水利用を通しても地球の運命共同体化は明らかである。
 世界の水問題を詳細に取り上げ、それが日本にも無関係でないことを示し、各々に問題の解決を訴える文章に心打たれた。あらゆる意味において国境というものはもはや意味をなさなくなってきている。遠い異国のことだと見過ごさず、自分の生活や未来がかかっているのだと認識しなければならない。

文:ぽてち
by shohyo | 2005-06-23 14:18