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神戸学院大学人文学部人間文化学科2005年特別講義I編


by shohyo

青春俳句を読む

青春俳句を読む_d0068008_1350242.gif「古池や蛙飛びこむ水の音」
誰もが学生時代の古典の授業で、一度はこの芭蕉の俳句にふれたことはあるだろう。
著者はこの句によって若者は俳句という文芸を敬遠してしまった人が少なくないと思うと言っている。その理由としては、いきなり「古池や」とくるものだから現代を生きる若者の感性には合わないということだ。この本の中では青春俳句ということで『青春Ⅰ・Ⅱ』『友情』『恋愛』『家族』『教室』『教師』『勉学』『読書』『試験』『行事』『卒業』と12個のテーマに分けて展開されていく。今お歳を召している方にもかならず青春時代があった。
そして私たちも今は、青春時代真っ盛りである。この本では過去を振り返って詠む俳人の俳句や、まさに今の青春を詠んだ若者の俳句を同時に見ていく本です。
 「満月見る中退のやつも親友で」
これは『友情』の部分でという若者が詠んだ俳句である。俳句には決まりごとがあり、その一つに、必ず「季語」を入れることがある。この場合、季語は満月で、季節は秋となる。芭蕉の句とは違い、とても現代風に感じる。その効果はきっと「中退のやつ」という大胆な表現の仕方にあると思う。
 「鉛筆の落ちし音して大試験」
これは『試験の』部分で教師が詠んだものである。私はこの句で何も考えずにすぐに情景を思い浮かべることが出来た。
ちなみに季語は「大試験」で季節は春だ。きっと緊張とあせりと不安で鉛筆を落としてしまったのだなと、自分の入学試験のときの緊張を思い出させてくれる句だ。
 著者はこのように、若者が俳句を見てこの俳句は面白いと感じて欲しい、そして俳句という文芸に少しでも多くの若者が興味を持ち挑戦してみようという気持ちになればと思いこの本を書いた。よって、どのページにも共感しやすいもの、情景を思い出しやすいもの等を載せている。また、近代に詠まれた俳句なども載せて現代と類似する部分、異なる部分の解説を入れて、分かりやすくしてくれている。
そしてこの本は何より字が大きめで(ジュニア新書だからかもしれない)すらすらと読める。読む気が失せてしまう本はすぐに読むのをやめるが、この本はどんどん進むので、もう少し、もう少しと読んでいくことができる。
いつもと違うジャンルの本を読むことになったが自分の中の世界が広がった。

文:新・神戸っ子
by shohyo | 2005-06-23 13:50