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神戸学院大学人文学部人間文化学科2005年特別講義I編


by shohyo

「宮崎アニメ」秘められたメッセージ 

宮崎アニメには一つ一つに意味が込められた芸術である。

 ジブリの作品といえば誰でも一度は観たことがある有名なアニメである。しかし、そのほとんどはただ漠然に観ていたに違いないだろう。だが、その一つ一つの作品のなかには膨大な意味が隠されているとは誰も思わないだろう。たとえば、ジブリの代表作品でもある「となりのトトロ」である。
この作品には時間というものが数多く盛り込まれており、また意味も隠されているように思えるシーンがいくつかある。例えばメイちゃんが庭で遊ぶシーンでは、晩春から初夏にかけての時期が描かれていて、庭の池のオタマジャクシのつたない動きの中に、子供というつたなさとかわいらしさを感じさせている。晩春から初夏へ季節が変化すること、オタマジャクシからカエルに変態してゆくことを、子供が急激に成長することになぞらえて表していたりする。ほかにも、小学校の教室の黒板に六月二十三日(木)の日付が書かれますが、もし意図的な表現だとすれば、六月二十三日(木)であるのは昭和30年、35年、40年であるが、このなかで記憶すべき年は昭和35年六月二十三日(木)の日米安全保障条約が強行採決された日である。
 この日に限ってお父さんの帰りが遅くなったのは、ただの偶然ではなく、デモ隊などの行進によって電車が遅れ、バスに乗れなかったのではないのかと思われる。黒い雲は戦争での不安であり、雨は六月十五日の国会への抗議デモ隊と機動隊との乱闘の中でなくなった学生を思った涙雨になる。メイとサツキがお地蔵さまに「どうか雨宿りをさせてください」と手を合わせるのも、ただ、雨宿りだけのお祈りではないように見えてくる。それだけでも平和への思いが伝わってくるのではないだろうか。
今回はトトロを一例に出してみたが、このほかにもひとつひとつの作品に平和と戦争という思いがこめられている。それがどのように表現されているかは、それぞれだが宮崎流のメッセージではないかと考える。この書籍はすべての作品ではないが、いくつかの作品に着目し、分析して隠れたメッセージを見つけるヒントを探すサポートをしてくれている。

文:イノセンス
by shohyo | 2005-07-02 13:57